「私たちは7人」の墓、聖マリア教会の墓地、コンウィ

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この墓はワーズワースの詩「全部で7人We Are Seven」にまつわるものと伝えられている。この墓地には他にもウェールズの詩人たちが眠っており、ここをクリックすると興味深い人びとの墓へのミニ・ツアーができる。

詩人ウィリアム・ワーズワース(1770-1850)は、コンウィ(Conwyウェールズ語の綴り)を訪問したあと、教会の墓地でのひとりの子どもとの語らいをもとに、1798年にこの詩を書いた。そこには少女が語った「(きょうだいのうち)2人はコンウェイ(Conway英語の綴り)に住んでいる」という一行がある。

聖マリア教会の構内にあるこの墓は、いつの頃からかその語らいがあった場所と見なされており、記念品マニアが墓石を削って砕片を持ち帰るので、見る影もなくなっていた。そこで、残存する部分を保護するために、<アーツ・アンド・クラフツ>のハーバート・ラック・ノースの設計による小さなとんがり屋根のような鉄のケージが20世紀初頭に作られた。

少女は、きょうだい7人のうち2人は墓に眠っていると説明しながらも、「私たちは全部で7人」ときっぱり言う。それがワーズワースの詩想をかき立てたようである。大人の理性的な精神にとって、思いがけないことだったからだ。詩は、家族の悲しみにもかかわらず、子どもが静かに死を受け入れていること、しかもまだ共に生きているかのような平安を得ていることに、思いをいたしている。

ここをクリックすると原詩を読み、その朗読を聴くことができる。

郵便番号LL32 8LD    地図

69行の詩の一部を日英対訳でご紹介したい。 

Sisters and brothers, little Maid,      「お嬢ちゃん、きょうだいは
How many may you be?"           何人いるの?」               
"How many? Seven in all," she said    「何人? 全部で7人よ」 と答えて                   
And wondering looked at me        少女は不思議そうに私を見た。
  
"And where are they? I pray you tell." 「みんなどこにいるんだい? 教えてよ」
She answered, "Seven are we;      少女は答えた 「私たちは7人で、
And two of us at Conway dwell,     2人はコンウェイに住み、
And two are gone to sea.         2人は船乗りになっているわ。

"Two of us in the church-yard lie,    2人は教会のお墓に眠っているの、
My sister and my brother;          姉さんと兄さんよ。
And, in the church-yard cottage, I    墓地のそばの小屋に
Dwell near them with my mother."    あたしと母さんは住んでいるの」

「2人がお墓にいるなら、きみたちは5人でしょ」と彼が言うと、少女は「お墓はうちから12歩くらいで、あたしは今もそこで彼らと過ごすことがある」と説明した。
                                    
"My stockings there I often knit,     よく あたしはそこで靴下を編み、
My kerchief there I hem;        ハンカチの縁をかがるのよ。
And there upon the ground I sit,     そこの地面に坐って、
And sing a song to them.          2人に歌を聞かせることもあるわ。
                        
"And often after sun-set, Sir,       よく 日暮れたあとでも、
When it is light and fair,           明るくいい天気なら、
I take my little porringer,          あたしはおかゆのお椀をもって行って、
And eat my supper there.          そこで夕飯を食べるのよ。

「(だから)私たちは7人よ」と彼女はきっぱり言う。

翻訳・補筆: 藤沢邦子 (日本カムリ学会会員)