ディアスト駅とループ線路
ディアスト駅は、フェスティニオグ鉄道の美しい丘陵地にある。同鉄道は世界で最初に狭軌線路で蒸気機関車を採用したことで知られ、その線路の幅はわずか60センチだ!
駅名は正確にはY Dduallt で、「黒い丘」という意味。Yは英語のtheに、du はblackに、allt はhill またはslope に相当し、口語なので定冠詞Yが脱けて Ddualltとなっている。発音を聞くには こちらをクリック。
人里離れた地にあるこの駅は1880年頃オープンした。それまでは、ここにはポルスマドグからブラエナイ・フェステティニオグへと延々と登ってくる蒸気機関車に水を補給するための水槽と石の土台しかなかった。1930年代に、人気観光地のポートメイリオン・ヴィレッジを建設したクロー・ウィリアムズ・エリスが、駅の周辺に景観設計を施した。
ウィリアム・トマス・エドワーズ(1863-1940)は、船乗りを志していたがわずか一航海でそれを諦めて、ここの駅長となった。だが仕事があまりに孤独で退屈だったので、彼はリヴァプールに移って、詩人となった。彼の詩人名はダイドラエスである。
駅は1939年に閉鎖され、1968年に再びオープンした。それからの10年間、ここはポルスマドグからの路線の終着駅として利用されてきた。その間に、有志らがその先に新しいトンネルを作り、列車をブライナイ・フェスティニオグまで走らせる土堤を築いた。線路はもともとはディアスト駅からモエルウィン・トンネルに直進していたが、1957年のフェスティニオグ水力発電所の建設に当たり、トンネルから先の線路が水没することになった。代りの線路は少し高い地点でタンアグリシェ貯水池の西側に再建された。丘陵地での勾配を緩和するために、ループ線路が駅の周辺に敷設され、列車は駅をぐるっと回りながら登っていく。(右の写真は駅ホームから撮影)
寄稿: ウェールズ地名研究会のハイウェル・ウィン・オーウェン教授
翻訳: 藤沢邦子