ラブスプーン・ギャラリー、マンブルズ
このギャラリーは、ラブスプーンの制作者たちが作品を展示し販売するために、1987年にオープンされた。当時は、土産物店で売られるラブスプーンの多くがウェールズ以外の土地で大量生産されていた。そこでギャラリーの創設者パトリシア・プライスは、ここウェールズで、遠い昔からラブスプーンを作る伝統工芸が続いてきたことを人々に示そうと思った。
2002年、ギャラリーは長さ64センチの巨大なラブスプーンを、ラグビーのウェールズ代表チームのために制作。これは選手たちの郷土愛を象徴するマスコットになった。彼らは今もそれを国内外の遠征に持っていき、チームで一番若いメンバーがその管理を任されている。初代のラブスプーン管理者は、フッカーのヒュー・ベネットだった。
ウェールズ国立博物館のコレクションのうち、最古のラブスプーンは1667年に遡る。が、スプーン作りの伝統はおそらくもっと古いだろう。ただ、木を削って作るスプーンはデリケートで、年を経ると変形したりひび割れたりするので、より古いものは捨てられたりして残っていないのだ。
ラブスプーンはそもそも、青年が若い女性に愛の告白として、手作りして贈ったものだった。女性がスプーンを受け取れば、恋愛関係が生まれたのだろう。調理や食事に使われるスプーンは、大量生産が無かった時代にはどの家庭でも大切な品物だった。素敵なスプーンを彫り、未来の伴侶にプレゼントすることは、男性の実際的な生活能力を示す手段のひとつでもあった。
目を引く意匠がスプーンの柄に彫りこまれたーー愛を告白するのが気恥ずかしい青年にとって、理想的なやりかただ。愛を象徴するハートマーク、富を象徴するダイアモンドの絵柄。鎖のデザインは、受け取り手との永遠のつながりを願う彫り手の気持ちを表わしていた。
翻訳: 藤沢邦子
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